最近話題の本に「ウェブ進化論」という本があります。ニュースサイトや個人の考察Blogでやたらと目にするので、バイブルのような存在の本なのだなぁ、と感じていたのですが、タイトルから受けた印象で「どうせどっかの大学の教授か何かがタイミング良く本を出しただけだろう」と斜に構えて読んでなかったんです。分厚い本で、分かりにくい文章、書いてあることは基本的なことばかり、というのを想像していました。考えを改めたのは、「はてなブックマーク」でよく上位に入っているBlogの筆者さんがこの本の作者だと知ってからです。早速購入して読んでみたところ、自分の先入観だけの印象はまるで的外れだったことがわかりました。
「ウェブ進化論」ですが、新書版サイズで250ページほどしかありません。価格も740円と安いです。かといって内容が薄く、ITリテラシーの低い人向けの本ということもありません。後書きにもありますが、「若いIT技術者」にも「旧来の巨大ITシステムを利用している会社の経営者」にも「ベンチャー企業に就職した技術者の家族」にも有意義な内容となっています。文章の品質が非常に高く、誰でもスルスルと読み終えることが出来るかと思います。それでいて、この内容、この密度。自分の中にある「物事を考える視点」が確実に2つ、3つ増えましたよ。本当に読んで良かったと思える一冊でした。
筆者の梅田望夫さんですが、背表紙にはこのように書かれています。
1960年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。東京大学大学院情報科学科修士課程修了。94年よりシリコンバレーに在住。97年にコンサルティング会社、ミューズ・アソシエイツをシリコンバレーで創業。2000年には岡本行夫氏らとベンチャーキャピタル、パシフィカファンド設立。05年3月より(株)はてな取締役。IT分野の知的リーダーとして若い世代から圧倒的支持を集める。著書に「シリコンバレーは私をどう変えたか(2001年、新潮社)」ブログは「My Life Between Silicon Valley and Japan」(http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/)
凄い経歴のお方です。
・日本でトップクラスの大学/大学院を卒業している
・若くしてITの本場シリコンバレーに渡り、最新の刺激を受け続けている
・ベンチャー企業2社の設立に関与
・コンサルティング業務の経験あり
・はてな取締役
もともと頭脳明晰な上に、時代の流れが読め、リスクを恐れずビジネスを興し、人にわかりやすく自分の知識を伝える能力まである。「IT分野の知的リーダーとして若い世代から圧倒的支持を集める」のも頷けます。自分もこの1冊ですっかり支持者になりました。「シリコンバレーは私をどう変えたか」も是非読んでみようと思います。
本の内容ですが、
「オープンソース」「チープ革命(ムーアの法則)」「インターネット」の組み合わせにより、今までのビジネス世界では考えられなかった方法によって、どんどん社会が変わっていくだろう。
というのが超・要約になるかと思います。自分の拙い文章で長々と紹介するのは失礼なんで、是非読んでください。すでに「Web2.0」関連の議論では、この本を読んでいることが前提となっている節があります。この本が骨子となってその上に議論を積み重ねているわけです。この本を読んでなくても議論の内容はわかります。つまり、この本は革命的な内容ではないのです。「私たちが何気なく使っているウェブ上のサービスは、私たちが思っているよりずっと凄いもので、可能性に満ちているんだよ」ということを易しく教えてくれているだけなのです。この本を読んだ後では、「Web2.0」関連の議論は全く違って見えると思います。ウェブの最新技術好きのマニアックな話に思えていたものが、「今後の世界はどのようになっていくのか」というものに変わります。
発売して2ヶ月も経っておいて紹介すると「お前が遅れているだけで、周りはもう当たり前のように読んでるよ」と言われると思いますが、もし読んでいない方がいらっしゃいましたら、是非読んでみてください。本当にお薦めの一冊です。
先入観にとらわれたまま、読むことのないまま、進まなくて本当に良かったよ・・・。