「後手という生き方」 読了

61年ぶりに編入試験によってプロ棋士になられた瀬川晶司さんのエッセイ。プロ棋士になるには小学生や中学生の頃から奨励会に入会し、厳しい争いをくぐり抜け、4段になる必要があります。瀬川さんは3段まで登られたのですが、そこで年齢制限を迎えてしまい、脱退。一度はプロへの道を諦めますが、アマチュアとして多数大会に優勝し、プロとの交流戦で優秀な成績を収め、周りの応援を受け日本将棋連盟にプロ編入の嘆願書を提出し、特例的に編入試験を受け見事合格され、61年ぶりに奨励会以外の方法でプロ棋士になられた方です。
瀬川さんの一件でプロになる年齢制限が必要かが見直され、その結果、奨励会の年齢制限を超えていても、アマチュアで優秀な成績を収めた場合、プロ棋士になれる制度が設立されました。
本書では、羽生さん(中学生でプロ棋士になり、史上初の七冠を達成)、渡辺さん(弱冠二十歳で竜王を獲得)のような若き天才を先手、自分のような遅咲きを後手として、その人生観を語っておられます。
読み終わっての瀬川さんへの印象は「不屈・冷静」でした。天才である「先手」に対して「敵わない」と白旗を揚げるでもなく、「大したこと無い」と過小評価や現実逃避をすることもなく、「あちらの方がすごいけど、地道に距離を詰めていけば、追いつけないことはない」と評価しているように思えます。かといって「いくつになって将棋を始めてもトッププロになれますよ」と甘い夢を囁くわけではない。自分にも、相手にも、第三者にも、正当な評価と敬意を払える方なんだな、と感じました。
上の段落の文章なんですが、かなり推敲したんですが、瀬川さんの半分も表現できていません。自分の文章力のなさが情けない。本書の最後で瀬川さんと対談されている渡辺さんもそうなのですが、棋士の方は人格的に素晴らしい人がとても多いです。一般の人、たとえば、サラリーマンを例に挙げますが、一流企業に最高の経歴で入社し若い間に出世した人と、一度挫折し人生の回り道をしやっとの思いで同じ会社に入社した一回りも年上の新入社員が居たとします。この二人が話したとき、互いに正当な評価をしたり、敬意を払ったり出来る人は少ないと思うのです。表面上は穏やかにも見えるけど、腹の底は見せない、そんな会話になるんじゃないかと。瀬川さんと渡辺さんの対談にはそれがない。その場に居合わせたわけではないですが、対談の場には厳しいけれど不快ではない凜とした空気が満ちていたことを感じさせる文章でした。
タイトルからはHOWTO本を想像される方もいらっしゃるとは思いますが、そういう本ではありません。しかし、必ず価値のある内容の一冊だと思います。

後手という生き方―「先手」にはない夢を実現する力 (角川oneテーマ21 (A-60))
後手という生き方―「先手」にはない夢を実現する力 (角川oneテーマ21 (A-60))
  • 発売元: 角川書店
  • レーベル: 角川書店
  • スタジオ: 角川書店
  • メーカー: 角川書店
  • 価格: ¥ 720
  • 発売日: 2007/03
  • 売上ランキング: 154554
  • おすすめ度 3.5

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